tern Verge X30h SRAM DD3 の修理依頼

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「懐かしいですね」SRAM DD3 内装3段ハブに外装10速を装着した tern Verge X30h です。2012年デビューの X30h ですが、ブラックの limited カラーですから2015年モデルですね。ハブだけ考えると27速時代の DAHON Vector X27h / SPEED PRO TT までさかのぼります。

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今となっては、製造を中止した SRAM DD3 の内装変速が機能しなくなり走行不能となったそうです。



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早速フリーハブを外してみると原因が現れました。



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フリー爪をホールドしている細いエキスパンダスプリングが切れています。以前修理した SRAM i3 と違い爪に損傷がないのは、上に見える樹脂のリングが、爪が外部に飛び出すのを防止ているのと、


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ハウジング内のギザギザ内部に収まっているからです。



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ここにいたはずです。



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仮に輪ゴムをはめてみました。



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エキスパンダースプリングは、爪をホールドするというか爪を立てる働きをしているので強い力は掛かっていないためピッタリサイズの輪ゴムであれば走行可能となりますが、30km 走行毎に輪ゴムの交換となるでしょう。


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エキスパンダースプリングのいた溝は、外径約26mm。



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でもって爪の割が1.54mm ですから、これより細いコイル径のものが必要です。



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ハブ単体でストックしていた DD3 を開けてみると、



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こちらも同じようにエキスパンダースプリングが切れていました。



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伸びてはいますが全長約80mm でコイル径約1.1mm の線径約0.18mm。



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輪にしてみるとΦ25mm。(環内径と呼ぶらしい)こんなものあるだろうか。



こんなもの昔触ったことがあるなと思い出したのが、モーターサイクルの4気筒キャブレターとエアクリーナーボックスを繋ぐダクトに付いていたエキスパンダスプリング。調べてみると「ガーターばね」と言うらしい。早速 Monotaro / MISUMI 等で探してみると最小線径が0.35mm までしかない。どうやら工業規格でこれが一番細いのかもしれない。

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試しに Monotaro から取り寄せてみたが、太すぎてお話になりません。



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ついでに合いそうな C クリップも取ってみた。



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問題は、この合口隙間。



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溝にはまって、



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爪をちゃんと立たせて機能しているが、



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合口隙間を爪に掛からないところにセットするもの、



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ラチェットに組んで数回回してみると案の定爪の部分に移動していた。これでは、4つある爪の内一つが機能しません。


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更に分解を進めると一番奥にももう一つフリー爪がある。i3 の時にプラネタリギヤユニットと命名した部品で、ここにもエキスパンダースプリングを使っているが、全くの無傷。この訳は、次回に。


これはもう修理不可能か?構造上フリー爪は破損しないのに、スプリングばね1本で走れなくなっているものは沢山あるはず。諦めかけていたところ、こんな特殊なガーターばねを扱う会社を日本国内で見つけたのです。

明日につづく、