みなさま、こんにちは。Yuboです。


今回は SRAM Red eTap のブレーキ編の第2回目になります。

Herzberg
2回目といいつつ、自転車について大した知見もない私が、ブレーキについて何ら多くを語れるはずもなく、またとりわけ SRAM のブレーキに限定した話になると、前回でほとんどネタ切れでした。。SRAM はオフロードの実績があるため、ディスクブレーキの話であれば色々語れたでしょうけれど、残念ながら使った経験がありません。

正直別のトピックに切り替えて、今回のブレーキの話題についてはスルー(つまり break through ならぬ brake through) したかったわけですが(汗)、ここは開き直っていつものように初心者の視点で語らせて頂きたいと思いますので、もしお時間が許すようでしたら、しばし私のうんちくにお付き合いください。

前回はブレーキという「部品」の選定が決まりましたが、その機能を発揮するためには、当然これに関連する部品の調達が併せて必要となります。以下しばらくの間、業界や経験者の方には退屈なお話になってしまいますが、ここで一通りブレーキ関連の部品を確認してみたいと思います。

ブレーキそのものは自転車の機能として制動力を担うわけですが、考えてみればそれは乗り手の握力を増幅してこれを制動力に変換する役割を果たしているだけであって、単体では何の役にも立ちませんね(むろんその造形美に惚れ込んで、部屋のオブジェクトとして鑑賞する人もいらっしゃるでしょうけれど)。

一般に完成車を買った場合、最初からブレーキが効かない、と感じることはおそらく希でしょう。止まれない自転車を乗りたい人なんて誰もいないでしょうから、メーカーやブランドを問わず、たとえどんなにコストダウンが図られていたとしても、ブレーキだけはそこそこいいパーツを使っていて、きちんとセッティングがなされている、実情はそんなところでしょうか。

ところが、一からアッセンブリーして組み上げるとなると、事情は大きく変わってきます。しっかり止まる自転車に仕上げるためには、自ら率先して様々な構成部品の仕組みや役割を知り、時にはごく当たり前のことを考え直す必要にすら迫られることもあるものだと実感しました。

そもそも自転車に求められる最低限の機能は、走れることと、止まれること。これらの機能は、物理的には正反対の機能であり、両者のバランスが重要になってきますね。たとえば、それほど速度のでない自転車にはそれほど優れた制動力がなくても乗れてしまうと思いますが、速く走るために作られたロードバイクなどでは、より強力な制動力が求められるでしょう。

もちろん、速度が上がるほど、乗り手に求められるテクニックもこれに比例してレベルが高くなってくるわけですが、制動力を高めるのにテクニックだけではどうにもならない場面が少なくなく、シチュエーションに応じて最適な部品の組合せが大きく影響してくると思われるのです。

ここで、改めてブレーキとしての機能を俯瞰してみると、そこには以下のような部品が構成要素として含まれていることが分かります。
  1. グローブ(手持ちのもの)
  2. シフター(eTap 標準構成)
  3. ブレーキケーブル(eTap 標準添付 )
  4. ブレーキ(TRP)
  5. パッド(通常ブレーキにはアルミ用パッドが標準添付)
  6. ホイール(カーボンホイールには専用のパッドが標準添付)
  7. タイヤ
このように、素手から地面まで制動力を伝えるためには、結構色々な構成部品が連携して機能していることが分かります。これまでのお話しを踏まえると、[3] のブレーキケーブルも SRAM のグループセットに付属していることから、この段階で残りの課題は [5], [6], [7] なるわけですが、今回はカーボンホイールを導入したかったので、まずはカーボンホイールについて色々調べ始めました。

とはいえホイール論を語り始めたらきりが無いので、ここでは制動力に限った観点で考えてみることにします。カーボンホイールを前提にした場合でも、リムもカーボン製なのか、リムだけアルミ製になっているかで、2つの種類に分かれます。つまり、
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のような構造になっているわけです。カーボンリムの場合、一般にはアルミリムよりもブレーキが効きません。そこで、この問題を解決するために、多少重量が増えることをよしとして、リムの部分だけアルミにしてしまうのが折衷案として生まれたわけです。

しかし、一方で重量を犠牲にすることなく、カーボンホイールのリム部分を特殊加工してしまうという発想も生まれるわけで、この加工に相当するのがマビックのエグザリットやカンパニョーロの AC3 などになります。
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ところが、このような仕組みの場合には、メーカーだけで問題を解決しているわけではなく、ユーザにその負担の一部が添加されています。具体的には、特殊加工した効果を最大限に発揮するために、メーカー独自のブレーキパッドの利用を前提条件とすることで、メーカー側でカバーする範囲を限定しています。これが結果的にユーザーにとっては専用パッドの利用を余儀なくすることになり、しかもモノによってはパッドの減りが早かったりするようで、いわばプリンターメーカーのプリンタ機器とインクの関係のようなビジネスモデルになっているわけですね。

はじめてこのようなカーボンホイールの事情を知ったとき、メーカーはなぜそこまであこぎな商売巧妙なビジネスを展開できているか、という点に疑問をもちました。ビジネスが成り立つためには、当然にそれを提供する側と必要する側があり、お互いが納得しているからこそ存続しうるものです。ただでさえ高価なホイールに付加価値を付けて、その負担はユーザに転化するなどといったことが何故こうもまかり通るものなのかと。

今回はこのようなホイール事情について、経営学をかじった人であれば名前ぐらいは聞いたことがある程度に認知されている「ハーズバーグの動機づけ・衛生理論」(あるいはハースバーグ)を用いて紐解いてみたいと思います。名称や内容についてはご存じの方も多いと思いますが、この理論は「満足の反対は不満足ではない」という仮定を前提にしています。もう少しわかりやすく表現すると、「満足できなくても不満にはならない」、「不満が解消されても満足できない」という形でそれぞれを別々の指標として取り扱っています。

元々は、従業員が職場でどれだけのモティベーションもって仕事に専念できるか、という環境を評価するための指標だったわけですが、そんな難しい話はさておき、これはより一般に人が何かを評価する場合にも適用できるものです。つまり人が何かを評価する際には、「満足の程度」と「不満の有無」という2つの判断基準があると考えるできるわけです。

ここではユーザーがホイールに満足しているか、あるいは不満を抱いているか、という課題に限ってお話しすると、見た目がかっこいいというのは満足の程度の話であって、極端な話、かっこよく無くてもホイールとしての機能は満たされています。一方で、ブレーキの効き具合については、不満があってはダメわけで、これでは最低限の機能が満たされません。したがって、これらにはそれぞれ別々の指標が適用されます。

それぞれの目標値について、満足の程度に上限はありませんが、不満の有無はある種の閾値を仮定して、それを下回らないことが判断のポイントになります。満足は満足度とも言われるように数値で図ることが比較的容易であるのに対して、不満はないかあるかの二値で測られるとも言えます。

ブレーキの課題は、単に制動力を高めるだけでなく、レバーを引いた際のレスポンスを上げること、長い下り坂などで生じる高温にも耐えうること、ウェットコンディションでも性能が落ちないこと、など内容が多岐に渡ります。これを「不満の有無」で判断すると、現在のカーボンリムの技術の位置づけとしては、「平地でドライコンディション」のときに限って不満が解消されるレベル(閾値)に達している、という感じでしょうか。見方を変えると、カーボンリムの制動力は、いまだ発展途上の段階であると言えます。

人によっては、このような振り分け方に違和感を覚える方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。まったくその通りで、実はそこにこの理論のポイントがあります。何に満足し、何に不満を感じるかは人それぞれ異なります。だからこそ他人の考え方をいったんバラしてみて、それが満足の程度の話なのか、不満の有無の話なのか、という視点で考え直してみる価値があるのです。

カーボンホイール事情についておさらいすると、どんなにかっこいいホイールを装着しても、止まれなければ意味がありません。もちろん資金の事情にもよるわけですが、ユーザがまだまだカーボンホイールについては少なからず不満を抱いているからこそ、メーカーがあの手この手を使って打ち出してくる施策に手を伸ばしてみたくなるのでしょう。

もっとも私の場合には、自分がどう判断していいかわからないときに、頭を整理するための枠組みとして利用することが多いのですが、今回のケースでは、ホイールを評価するにあたってはあまりにも評価する観点が多岐に渡っていたので、他から敢えてこのような理論を援用して考えてみました。自転車に限らず比較的大きな投資をするときは、その時の自分だけでなく将来の自分をも納得させる必要がありますからね。

堅苦しい話はここまでです!私のたわいもないお話にお付き合い頂きありがとうございました。一方で、SRAM のブレーキの話をする余裕がなくなってしまいましたので、誠に勝手ながら次回以降に延期させて頂きたいと思います(汗)

〔インドの旅を振り返る〕

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マイソールで宿泊した元王家の宮殿です
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よく手入れされた庭園の前で
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当時の面影がたくさん街に残っています
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優雅に読書でもしたかったバルコニー
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中庭も広々としていました
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ロビーのフロアで撮影
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レンタル自転車もあります
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走りながら片手で ちょっと危なかった(汗)
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どっかの街の交通事情とは雲泥の差です
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犬も人に負けず横柄すぎ
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どこまでも真っ直ぐな道


マイソールにきてはじめて自転車に乗ってインドの風を感じることができました♪ ここなら次回来るときは、ロードバイクも持ってきたい。。。


【橋輪コラム】

何やら Tubo 複雑なことを考え過ぎて具体的なブレーキの話に到達できませんでしたね。ようは、完成車と呼ばれる26/27インチにおけるママチャリやシティーサイクル、700c ロードバイクやクロスバイクでのタイヤサイズ、リム幅は標準たるものが出来上がっていて、それに合う規格のブレーキが、高価なものから安物まで世の中に沢山出回っているわけです。なので安物のママチャリやクロスバイクを買ってもブレーキの効かないものは無いってことです。

では、標準でないものとは、ビーチクルーザーやBMXです。これらはタイヤが太いためにキャリパーブレーキ(ママチャリのフロントもキャリパーブレーキ)使用時は、ロングリーチタイプを使わざるおえません。これが標準ってものからロングリーチに変えるものですからレバー比が変わってきてしまいます。

特に5万円以下で買えるBMXは全くブレーキが効きませんので、競技どころか一般道でも危険なものがあります。これは、そのBMX に乗らなくともブレーキレバーを握っただけですぐに分かります。握った瞬間パチンとリムを挟み、そこから全く握りこめません。良いブレーキは、リムを挟み込んでから”じんわり”と握り込めなければいけません。

大切なのはブレーキレバーとキャリパーのレバー比が合っているかです。では Yubo、次回の記事で実験してみて下さい。ペンチで指を挟むと肉が潰れて、そこから更に”じんわり”と握り込んでいくと骨が砕けますが、ペンチを反対に持って握りこぶしを挟んでみても全く痛くありません。

怖!