”MASI 俊樹”流学60日目(俊樹、生きていたか)

3月14日、ポーランドはCzestochowa(チェンストホバ)と言う町にたどり着いてから音沙汰がない俊樹。もしやアウシュビッツに強制収容させられたのかと心配したが、どうやら生きていたようだ。

5/20  2:15

翌日、キャンプ場を出ると、再び街の中心地に出て、自転車屋を探すことにした。

スポークが2本折れたままでもうずいぶん長いこと走っている。


前日通りがかった街で見つけた自転車屋は、GIANTも扱ってるのでこれはイケる!と思ったら定休日だった。街中も閑散としており、どうやらポーランドでは木曜日は定休日のお店が多いようだ。


しばらく歩き回ってみるが、一向に見つかる気配がないのでタクシー運転手に訊いてみることにした。

暇そうに鼻毛を抜いている運ちゃんに、自転車をぽんぽん叩きながら

「バイシクル!ショップ!」と辺りを見回すジェスチャー付きでいうと、


「おおそれならな、右いって左いって、右いってまっすぐ行ってな、地下だ、地下にあるからな。覚えたか?オッケーじゃ、がんばれよ〜」


なんて調子で教えてくれた。


ホントに自転車屋が地下にあんのか?と思って歩いていく。

どうやらこの通り沿いにあるはずだが・・・

ないぞ?


と思って、通行人に訊ねると、


「どこって、そこだよそこ。」


と指さした先は3歩手前の地面。

おお!階段がある!マジで地下にあったのか!


しかし、階段も入口もだいぶ狭い。これをこのチャリ担いで降りろってか・・・


だが荷物外して1個ずつ運んで事情を説明するのも面倒だから・・・。



ゼッタイに荷物を外した方が楽だが、渾身の力で愛車を持ち上げてのっしのしと降りて行った。

入口にたどり着くと危険を察知したお客さんが手をかしてくれた。


汗だくで挨拶をし、スポークが折れていることを説明する。

どうやら修理はできるようだ。

ホッと一息つくと、


「じゃ、今日の夕方取りに来てくれ!」

といってきた。


「急いでるからなるべく早く欲しいんだけど。」

というと、少々めんどくさそうな顔をして、ちょっと待ってろという店員。



また一泊するのはめんどくさいなぁ。

と思っていると、奥からいかついスキンヘッドの兄さん登場。

なんだ!?用心棒でも連れてきたか!?


と身構えたが、彼が整備担当らしい。

すぐやってやるよと奥に連れて行ってくれた。


そして、整備するのにどの台を使うか・・・と思案している。

とりあえず重さは・・・と持ち上げようとすると


なにこれ!?くっそおもてぇ!

とびっくり顔でこっちを見てきた。

「よくこんなの乗ってるな!とりあえず荷物外してくれ重すぎてだめだこりゃ。」

と笑った。


荷物を外し終えると、


「オレは、スワボミルだ。よろしくな。」


「トシキっす!どーもどーも」

と自己紹介をする。


スポーク調整を真剣に見るのは初めてで、暇だしおもしろそうだと彼の作業を見させてもらうことにした。

ドイツでは10分もしないうちに終わったよーと持ってきたが、スワボミルは見かけに大いに反して優しく丁寧な手つきで作業を進めていく。



タイヤを外し、新しいスポークを入れると細やかな調整に入る。何度もホイールバランスの歪んだ箇所を締めては、幅を狭めてまた調整を繰り返す。


そんな細やかな作業を見ていたら1時間ほど経っていた。

途中から「もうそんなもんでいいよ、レースに出るわけでもないし・・・」と言いたくなるくらい真剣にやってくれた。



ようやく作業が終わり、荷物をまとめていると、

「そういえば、Facebookやってる?せっかく会ったし、お前がこれからどうなるのかすごく気になるんだ。」

と照れくさそうに言ってきた。本当に見た目とのギャップがすごいな・・・

と苦笑し、名前を交換した。



そして硬い握手を交わして、「ありがとう。ヨーロッパ1の腕前だよ!助かったぜ!」

というと、へっへっへっと笑った。

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画像拡大してスワボミルの右手見てよ!俊樹のホイール触ったから真っ黒だ。一生懸命やってくれたんだね!

それから、街を出てクラクフを目指した。


              明日につづく、