”MASI 俊樹”流学58日目

 マチェックとウォッカをあおった俊樹、その後は

2人でウォッカ2本を開け、ぶん殴られたかのような睡魔に襲われて眠ったあと、一度も起きることもなく昼前に目覚めた。

頭の内側で駄々っ子が暴れているかのようにガンガンと痛む。
 
やっとのことで起き上がり、キッチンに行くとマチェックも起きだしてきて非常に体調が悪そうだ。

こいつ昨夜は「トシキ、しってるかい?酒はね、色がついていないほうが二日酔いになりにくいんだ。だからウォッカは最高なのさ!」
みたいなこと言ってなかったっけ?笑
 
 

2人してつらそうにしているのを見て女の子たちは苦笑。
 
マチェックは最初にあった時よりも不機嫌そうな顔をしていたが、つるつるの頭を揉みながらこの部屋の住人一人ひとりの名前とアパートの住所を書いて、「いいかい、これがオレたちの名前と住所だ。いつだって遊びに来てもいいぜ。また飲みにこいよ!」
と言ってくれた。
 
書き終えると、ふらふらと立ち上がり、固い握手を交わして彼は仕事へ出かけて行った。
 
彼の背中を見送りながら自分もここを出発しなければいないことを思い出し、だんだんとさみしさがこみあげてくるのを感じた。
 

でも、いつまでもここにいるわけにはいかない。オレも立ち上がり、ゆっくりと荷物をまとめ始めた。
 
そして、最後の雑談を終え、昼過ぎにアパートを出ることにした。
 
急な階段をMASIを担いで降り、荷物を取り付けて準備はできた。
 
カミラとカロリーナは悲しげな顔をしてくれた。
 
2人は「気を付けていってらっしゃい!また連絡頂戴ね!」

といって、最後にハグをしてくれた。
 58-1

また会おう!と言って、MASIにまたがり、走り出す。

振り返るたびに二人は手を振り返してくれた。
 
 
2人には本当によくしてもらった。

あの田舎道の偶然の出会いがこんなにもつながって、たくさんの笑顔と、喜びと、会話が生まれるだなんて。

2人のおかげで最初は不安だったポーランドが大好きになった。

また来ようという場所がひとつ増えたのを感じた。
 
 

 
アパートを出て、スポークを直さなければならないのも忘れ走り続けた。

走り出すと、悲しみは幾分、薄れた。目の前の道はまだ見知らぬ風景につながっているのだ。
 
そう、なにがあるかわからないからこそ楽しい。

だから走り出す。

自転車旅には一分一秒に変化があり、感動がある。それを得るには走るしかない。
 
 

道はやがて街を出て、再び田舎道に戻った。

収穫時期を迎えた畑にはのんびりと働く農夫たちがいた。
 
 
そう、寝れるところがない!!!
 
 
陽はどんどん傾いていき、やがてあのアパートがある街のはるか向こうに沈んでいった。

月の明るい夜だった。

道路端に掲げられた十字架を見つけ、その茂みに飛び込んでいく。

道路までは3メートル。

寝れるのか?寝れるのか?

もう、めんどくさいからいいや!とテントを張り、腰を下ろす。
バーナーをセットし、鍋に水を張って鶏肉をぶち込んで煮ていく。
 
まだ、出発から数時間だというのに、みんな元気かなぁなんて考えていると、
 
 
バッシャーン!と鍋が倒れた。
 

ちくしょおおおおおお!
 

三秒ルールで再び鍋に放り込み、やり直し。
 
が、しかしまたバシャーン!
 
なんでこんなにぐらぐらしてんだよおぉこのくそバーナーが!!!と思わず叫びだしそうになるのを必死にこらえ、生煮えの鶏肉を喰う。
 
こんなことなら出発は明日の朝にすればよかった・・・・
 
 
時折行きかう車のライトに照らされながら、浅い眠りを繰り返す、まさに天国からいきなり地獄な夜だった。
 
(58日目Wroclaw〜Skorogoszcz 85.39辧

             明日につづく、